研究のトピックス

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(1) 翻訳後O-型糖鎖修飾によるタンパク質の形質膜II型糖タンパク質へのリクルート
J. Biol. Chem. 278, 10523-10530 (2003)

(2) スフィンゴ脂質シグナリングのミッシングリンク:中性セラミダーゼの新しい遺伝子ファミリーの発見 →各論へ
J. Biochem. 132, 229-236 (2002);
J. Biol. Chem. 276, 26249-26259 (2001);
J. Biol. Chem. 275, 11229-11234 (2000);
J. Biol. Chem. 275, 3462-3468 (2000);
J. Biol. Chem. 274, 36616-36622 (1999);
J. Biol. Chem. 273, 14368-14373 (1998)
蛋白質 核酸 酵素 47(4), 455-462 (2002)
 
(3) 糖脂質分解酵素エンドグリコセラミダーゼとセルラーゼは同じ遺伝子から進化した? →各論へ
J. Biol. Chem. 275, 31297-31304 (2000);
J. Biochem. 128, 145-152 (2000);
Biochem. Biophy. Res. Commun. 260, 89- 93 (1999);
J. Biol. Chem. 272, 19846-19850 (1997)

(4) 謎のリゾスフィンゴ(糖)脂質生成経路:海洋細菌由来のリゾスフィンゴ(糖)脂質生成酵素遺伝子のクローニングによって分かったこと
J. Biol. Chem. 277, 17300-17307 (2002);
J. Biol. Chem. 270, 24370-24374 (1995)

(5) イトマキヒトデから単離したTn-抗原特異的なC-type レクチン:クローン化したレクチンは癌細胞の検出試薬として有望
Glycobiology, 12, 85-94 (2002)

(6) 新規Pseudomonasスフィンゴミエリナーゼ遺伝子のクローニング:ウナギ赤点病との関連性
J. Bacteriology, 184, 540-546 (2002)

(7) ユウレイクラゲ由来のエンドグリコセラミダーゼの糖転移反応と逆反応を用いた蛍光標識糖脂質,新規アルキル糖脂質の合成
J. Biochem. 130, 263-268 (2002);
J. Biol. Chem. 275, 31297-31304 (2000)
 
(8) アトピー性皮膚炎とスフィンゴ脂質代謝: 細菌感染によるセラミド代謝の昂進はアトピー性皮膚炎の増悪因子? →各論へ
Biochem. J. 362, 619-626 (2002);
Clinic. Diagnost. Lab. Immun. 6, 101-104 (1999);
J. Biol. Chem. 273, 14368-14373 (1998)
化学と生物 38(8), 484-486 (1998)

(9) リゾスフィンゴ糖脂質による神経細胞のアポトーシス誘導:スフィンゴ脂質代謝異常症に見られるアポトーシスの原因物質
J. Lipid. Res. 42, 1197-1202 (2001)


(10) 水生細菌SCDaseの逆反応機構とスフィンゴ脂質工学への応用
Eur. J. Biochem. 268, 592-602 (2001);
J. Lipid Res. 41, 846-851 (2000);
Methods in Enzymology 311, 297-303 (1999);
Methods in Enzymology 311, 682-689 (1999);
J. Biochem. 126, 604-611 (1999);
J. Biochem. 125, 746-749 (1999);
Anal. Biochem. 263, 183-188 (1998);
J. Biochem. 123, 859-863 (1998);
Anal. Biochem. 247, 52-57 (1997)
化学総説 48, 33-38 (2001)

(11) 細胞内の生理活性脂質セラミドはUDP-glucose:ceramide:glucosyltransferaseによって厳密に制御されている
FEBS Letters. 475, 247-250 (2000);
J. Biol. Chem. 274, 8981-8987 (1999);
J. Biol. Chem. 271, 12655-12660 (1996)
蛋白質 核酸 酵素 43(16), 2488-2494 (1998)
実験医学 15(12), 1476-1481 (1997)

(12) 海洋微生物等を利用したスフィンゴ糖脂質及びリゾスフィンゴ脂質の生産
Applied Environ. Microbiology68(11), 5241-5248 (2002);
J. Lipid. Res. 38, 1923-1927(2001);
Applied Environ. Microbiology63(5), 1861-1865 (1997)


(13) 海藻由来のフロロタンニンの生理機能
Inter. J. Food Sci. Tech.37, 703-709 (2002);
Euro. J. Phycology 37, 493-500 (2002)

トピックス各論

 
スフィンゴ脂質シグナリングのミッシングリンク:中性セラミダーゼの新しい遺伝子ファミリーの発見
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 セラミダーゼは,生理活性脂質セラミドを加水分解する酵素です。酵素反応の最適pHによって酸性と中性/アルカリ性セラミダーゼが存在することが知られていました。1996年にドイツのSandhoffのグループが酸性セラミダーゼのクローニングに成功しました。この酸性酵素は,リソソームにおけるセラミドの異化作用に携わっていると考えられています。本酵素の遺伝的な欠損はFarber病という致死的なセラミド蓄積症をもたらすことでも有名です。最近,本酵素遺伝子の欠損マウスが胎生致死であることが報告されました。一方,培養細胞を用いた様々な実験結果から,中性/アルカリ性セラミダーゼこそがスフィンゴ脂質を介した情報伝達系を制御する酵素ではないかと考えられて来ました。この中性/アルカリ性セラミダーゼの遺伝子クローニングに私たちの研究グループと米国のHannunのグループが挑戦しました。結局,ここ数年の間に,私たちのグループは緑膿菌,結核菌,細胞性粘菌,ショウジョウバエ,ゼブラフイッシュ,マウス,ラットから,Hannunのグループは酵母とヒトから本酵素の遺伝子をクローニングすることに各々独立に成功しました。一方,Obeidのグループは前述の酵素よりも最適pHがアルカリ性にあるセラミダーゼを酵母とヒトから単離しました。これらの3種のセラミダーゼ(酸性,中性/アルカリ性,アルカリ性)の生理機能の詳細に関してはこれからの課題になりますが,クローニングの仕事により大変重要なことが明らかになりました。つまり,この3種の酵素は最適pHが異なるだけではなく,お互いに1次構造の相同性がない別々のファミリーを形成していることが判明したのです(図参照)。また,中性/アルカリ性セラミダーゼの遺伝情報は,バクテリアからヒトまで非常によく保存されていることも分かりました。現在のところ,バクテリアの病原因子であった中性/アルカリ性セラミダーゼは,高等動物ではシグナリング分子として機能するように進化したのではないかという仮説に基づき研究を進めています。

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糖脂質分解酵素エンドグリコセラミダーゼとセルラーゼは同じ遺伝子から進化した?
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エンドグリコセラミダーゼ(EGCase)とセルラーゼ(endo-b-1,4-glucanase)のアライメント

 エンドグリコセラミダーゼはスフィンゴ糖脂質に作用し,糖鎖とセラミド間のb1,1グリコシド結合を加水分解する酵素です。この酵素は放線菌で最初に見いだされましたが,クラゲ類やイソギンチャク等の刺胞動物にも含まれています。しかし,脊椎動物には存在しないようです。放線菌とユウレイクラゲのエンドグリコセラミダーゼの遺伝子をクローニングしたところ,この酵素はセルラーゼ(endo-b-1,4-glucanase)とほぼ同じ触媒機構を有していることが分かりました。しかし,エンドグリコセラミダーゼはセルロースを分解しませんし,セルラーゼはスフィンゴ糖脂質を分解しません。両酵素の立体構造を比較してみると,基質(糖脂質又はセルロース)が結合する部位(溝)に違いがあることが推測されました。このことは,『セルラーゼがセラミドを特異的に認識するアミノ酸配列を獲得することでエンドグリコセラミダーゼに進化したのではないか?』という仮説を提起します。地球上でもっとも量の多いセルロース,動物や植物の形質膜に主として存在し細胞レベルでの分子認識やシグナル伝達に関与しているスフィンゴ糖脂質,この余りにも生理機能が異なる2つの分子を分解する酵素が同じ祖先遺伝子から進化した可能性が示されたことになります。それでは,クラゲやイソギンチャクは何故エンドグリコセラミダーゼを持っているのでしょうか。現在,同じ刺胞動物に属するヒドラを用いてエンドグリコセラミダーゼの生理機能が調べられています。

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アトピー性皮膚炎とスフィンゴ脂質代謝: 細菌感染によるセラミド代謝の昂進はアトピー性皮膚炎の増悪因子?
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 皮膚の表皮にはセラミドと呼ばれる脂質が比較的大量に含まれ,皮膚の潤いを保つ働きをしています。その効用を狙ってセラミドを添加した化粧品も市販されているほどです。遺伝的な背景や環境因子が複雑に絡み合った疾患であるアトピー性皮膚炎は,皮膚の乾燥を含むバリア機能の低下が問題視されています。アトピー性皮膚炎では,皮膚のセラミド量が減少しているという報告もあります。そこで私たちは,九州大学医学部皮膚科教室の協力を得て,アトピー性皮膚炎患者の表皮の微生物相を調べることにしました。アトピー性皮膚炎患者の患部は,バリアー機能の低下が原因で外来微生物に感染されやすくなっています。特に,アトピー性皮膚炎の患部では黄色ブドウ球菌が高頻度で感染していることは良く知られた事実です。研究の結果、セラミドを分解する酵素セラミダーゼを分泌する細菌が統計上有意にアトピー性皮膚炎患部に存在することが分かりました。この報告は原核生物において見つかった初めてのセラミダーゼとしても注目されました。その後,細菌セラミダーゼの遺伝子はクローニングされ,その配列を基にしたセラミダーゼ分泌菌検出のための PCRキットが作製されました。このPCRキットで調べたところ,アトピー性皮膚炎患部では確かにセラミダーゼ分泌菌が正常コントロールに比べて顕著に高頻度で感染していることが確認されました。
しかし,細菌由来のセラミダーゼが実際にヒトの皮膚のセラミドを分解しているかどうかには疑問もありました。セラミドは疎水性の高い脂質分子ですから溶解させるには界面活性剤が必要です。このバクテリア由来のセラミダーゼもセラミドを分解するためには界面活性剤を必要としました。しかし,通常ヒト皮膚上に界面活性剤が存在するとは考えにくいからです。研究が進むにつれて,細菌セラミダーゼは界面活性剤がなくてもcardiolipin やphosphatidylglycerol等の陰イオン性グリセロリン脂質によって特異的に活性化されることが判明しました。cardiolipin やphosphatidylglycerolは,前述の黄色ブドウ球菌等のグラム陽性菌の細胞膜成分として知られています。そこで,セラミダーゼ生産菌が黄色ブドウ球菌を溶解する可能性を調べました。その結果,セラミダーゼ生産菌は,LasA, LasDと呼ばれる黄色ブドウ球菌を溶解させるプロテアーゼを分泌し,溶菌液から実際にcardiolipin やphosphatidylglycerolを検出することができました。このことから,「セラミダーゼ分泌菌がアトピー性皮膚炎患者患部に感染すると黄色ブドウ球菌の溶解が起こる。続いて,黄色ブドウ球菌から溶出した陰イオン性グリセロリン脂質によって細菌セラミダーゼが活性化され,皮膚のセラミドが分解を受ける」という仮説が提起できます。
セラミドが分解されるとスフィンゴシンと脂肪酸が生成されます。セラミダーゼ生産菌は,脂肪酸を炭素源として利用しますが,スフィンゴシンは代謝しません。スフィンゴシンには,細胞分化誘導,細胞毒性があることが知られています。実際,スフィンゴシンがヒト由来のケラチノサイトに強い細胞増殖抑制作用があることを確認しています。今後は,セラミドの減少とともに惹起されるスフィンゴシンの増加がアトピー性皮膚炎に与える影響も注意深く調べる必要があります。
現在,シャワー等で患部を清潔にすることを含めたスキンケアがアトピー性皮膚炎の治療に有効であることが確認されています。スキンケアは,セラミダーゼ分泌菌を除去することからも勧められます。しかし,セラミダーゼ分泌菌には抗生物質耐性菌が多いので,むやみに抗生物質を投与することは逆効果と考えられます。アトピー性皮膚炎の実際の治療に関しては,本研究の共同研究者である国立九州医療センター皮膚科医長 今山修平先生に相談されることをお勧めします。

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